第65回日本肺癌学会学術集会

会長挨拶

第65回日本肺癌学会学術集会 会長 大江 裕一郎 国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長

第65回日本肺癌学会学術集会
会長 大江 裕一郎
国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長

この度、第65回日本肺癌学会学術集会を、2024年10月31日(木)から11月2日(土)の3日間、パシフィコ横浜ノースにて開催させていただきます。

今回のテーマは、「総合力で肺がんに克つ」とさせていただきました。私が肺がん診療に従事し始めた昭和の時代では、肺がんの病理診断は小細胞肺がんと非小細胞肺がんを区別するのみで、それも時には細胞診での診断のみで済ませていました。治療も切除可能例には手術、切除不能局所進行例には放射線治療、遠隔転移例には化学療法をそれぞれ単独で行うという時代で、集学的治療という概念は定着していませんでした。

その後の治療の進歩、特に分子標的治療、免疫治療の進歩は著しく、肺がんの診療は大きく進歩し治療成績も大きく向上しました。令和の肺がん診療では、病理診断のみならず遺伝子診断が必須となっており、その為には遺伝子診断に使用できる十分な組織を採取する技術が必須であり、クライオバイオプシーなどが行われています。極早期の症例を除き、手術単独で治療されることは稀となり術前術後に抗がん剤に加え免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬が使用されるようになりました。同様に切除不能局所進行例に対する放射線治療も単独ではなく、抗がん剤および免疫チェックポイント阻害薬を併用することが標準治療となりました。遠隔転移を有する症例においても分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬に著効した後のoligo再発に対する手術が行われるようになっています。さらにはCT検診などでの早期発見、TRなどを通しての画期的新薬の創薬、第1相試験などでの新薬の臨床開発、多施設共同臨床試験での標準治療確立などで更なる治療成績の向上が期待されています。看護師、薬剤師などのコメディカルスタッフとの恊働、緩和ケア医や精神腫瘍科医などとの連携も患者さんのQOL向上には欠かせません。まさに総合力で肺がんに立ち向かう時代となっています。

日本肺癌学会は外科、内科、放射線科などの臨床と病理などの基礎、さらにはメディカルスタッフが一堂に会して、肺がんを中心とする胸部悪性腫瘍全般の基礎、診断、治療について議論できる極めて有意義な学会です。一人でも多くの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

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